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V字研メルマガ vol.119 「事業承継の理想は補完関係」

2015年11月29日 / 10時50分

急に寒くなりましたね。
風邪をひかないように気を付けてくださいね。

さて先日、以前勤めていたみの元部下2人に会いました。
一人は、統計学が得意で私をデータ解析でよく助けてくれました。
もう一人は、自動車分野に造詣が深く、
いつも説得力のある資料を作成し、私を助けてくれました。

上司にとってありがたいのは、
自分のこと真似する部下ではありません。
自分の欠点(穴)を埋めてくれる部下です。

当時の私は統計学に疎く、自動車業界とも疎遠でした。
そんなとき彼らは、中途採用に公募してきました。
面接したとき、すぐに「彼ならチームの穴を埋めてくれる」と
気が付きました。そこですぐに採用を決めました。

穴を埋める専門スキルを活かして、
彼らは約一年でチームのレギュラーになりました。
以来場数を踏んで、今や眩しいコンサルタントに成長しました。

リーダーの穴を見つけて、その穴を埋める。
これは、部下には欠かせない組織貢献の視点です。

同じことは、代替わりの時にも言えます。
後継者の多くは先代と同じ成ろうとします。
が、それよりも、大事なことは、
先代の穴を埋める補完関係を築くことです。

先日私が、専任講師を務めている
「なごや承継大学」で講師を務められた森朝奈さんも、
先代の穴を埋めて、存在感を発揮している後継者でした。
彼女は、名古屋で人気の居酒屋『下の一色』を
経営する株式会社寿商店の常務です。

同社はお父さんのタカシさんが創業しました。
女姉妹で育った森常務は子供の頃から、
「私が後を継ぐんだ!」と決めていました。

そんな彼女が大学生の時、彼女に見えた会社の問題点が、
同社のWebでの発信力の弱さでした。
それを補完するために、彼女は就職先に『楽天』を選びます。

ところが、配属先は三木谷社長の秘書。
花形の仕事ですが、
これではWebマーケティングのスキルが身につきません。
それでも彼女は目的を失わず、
同期に仲間からWebマーケティングのコツ等を学び、
そのスキルを持って『下の一色』に転職したのです。

入社後、彼女は他の社員と同じように厨房で働きながら、
「父のつくった信用の基盤の上で、
自分にしかできない仕事は何か?」を探します。

このとき彼女は、「なぜ、父の店にお客様が来ているのか」を調べ、
以下の3点を軸にブランディングをします。
・鯨料理(捕鯨のリアルを伝える)
・朝市(不定期開催を毎月の定例開催へ)
・三河の地魚を地産地消

そして、それを伝えるために同社のWebを一新しました。
メニュー開発にも取り組み、鯨料理を一層充実させました。
これらは、新しいファンの獲得に繋がりました。

さらに、それまで社長の独断で決めていた従業員の評価を、
客観的で公平な人事考課方式に改めました。
トップのマンパワーでぐいぐい引っ張る家業から、
ひとり一人のスキルを伸ばす企業へと進化させたのです。

こうした取り組みは、お父さんである社長から
「あれやれ」の指示を待つのではありません。
やるべきことを自分で探し、自分で実行していました。

そんな彼女をお父さんも安心して見ています。
講演会の時彼女は、会場に集まった多くの二世たちに
「親孝行のために後を継ぐのならやめたほうがいい。
自分のために決断してください」と語りました。

「親のために」と決断すれば、
思うようにならない時は、きっと親のせいにします。
「本当はやりたくなかった」などと言い訳も出るでしょう。

そうならないようにするには、まずは自分で決めることです。
そして、先代と後継者との間で
お互いの穴を埋め合う補完関係を築くことができたら、
自分の存在感とやりがいを感じることができるでしょう。

さあ、あなたも今いる組織の、上司の穴を探しましょう。
そして、組織のミッションを実現するために、
その穴を埋める方法を考えましょう。
そこがあなたのフィールドになれば、
仕事はどんどん楽しくなるでしょう。

 

V字研メルマガ vol.118 「大相撲に学ぶ、仮想敵に挑み続ける経営」

2015年11月25日 / 10時09分

先週、大相撲の北の湖理事長が亡くなりましたね。
言わずとしれた昭和の大横綱でした。

彼の時代の相撲は面白かったです。
敵役(かたきやく)がはっきりしていたからです。
相手を一気「吹っ飛ばす」破壊力。
相手を見下すようなふてぶてしさ。
それが、横綱北の湖でした。

こんな敵役に対し、多くの力士が挑みます。
輪島、貴ノ花、魁傑、若三杉、千代の富士…
彼らは二枚目で、歌舞伎役者のような華がありました。
が、華の理由はそれだけではありません。

強すぎる敵に、いつも「チーム」で挑んだのです。
貴ノ花は、優勝決定戦で北の湖に勝って初優勝したのですが、
その前日に魁傑が北の湖に勝って星の差を付けました。

その魁傑も、優勝決定戦で北の湖に勝って初優勝したのですが、
その直前に輪島が北の湖に勝ち、星が並んでの逆転でした。
「稀代の敵役」VS「HEROチーム」の戦いが
毎場所の楽しみでした。

強敵に使命感で挑むとき、挑戦者の結束力が強くなる。
このことは、企業経営でも同じです。
トップが従業員に強大な敵を見せ、
「この強大な敵に打ち勝とう!それが私たちのミッションだ!」
と語りかければ、従業員は持てる力をその一点に結集します。

ただし、このときの敵は「ライバル企業」ではありません。
企業が戦う敵は、この社会問題です。
企業は、自らが設定した「仮想敵」である
社会問題を解決するために存在しているのです。

では、仮想敵と戦う企業とはどのような会社なのでしょうか?
そこで今回は、岐阜県下で顧問先数No.1会計事務所である
職員数80名の「高井法博会計事務所」を紹介します。

同所の仮想敵はズバリ企業の『赤字』です。
現在、国内の企業の赤字企業の割合は、約70%です。
逆に言えば、黒字企業はせいぜい30%しかありません。
そのくらい、世の中が厳しい、ということです。

ところが、同所の顧問先に占める黒字企業の割合は
なんと69%です。世間の常識と逆転しているのです。
それは、同社が熱心に「黒字化支援」を実施しているからです。

一般に会計事務所は、税務署向けの資料作成や
記帳支援・代行が主な仕事ですが、同所はそれにとどまりません。
経営者・幹部向けの勉強会を毎月開催しています。
そして、黒字経営に導く戦略立案からマネジメント方法まで
教育し、個別のアドバイスを行っているのです。

その象徴が、年2回、岐阜市内のホテルに経営者を集め、
4泊5日の合宿形式で行う『経営計画実施作成セミナー』です。
同所の顧問先の経営者は缶詰めになって、
自分の翌年の経営計画を立案します。

先日、この合宿に私も参加してきました。
そして、高井代表の講義に大変な刺激を受けて帰ってきました。

当初は、経営計画を作るのですから、決算書の読み方や
戦略設計などの講義が続くのかな?と思っていました。
しかし、それは全体の一部にすぎませんでした。

5日間の時間の約半分が、高井代表の講話でした。そしてその内容は
「経営者は周知を集めて独裁せよ」
「銀行を接待するのは借りるときでなく完済したときだ」
「P/Lでできるのは改善のみ。B/S中心の経営へ」
「大火は種火から起こる。細かいことにうるさくなれ」
「逆境は自己改革のチャンス、感謝こそ危機突破のカギだ」
など、高井代表の経営哲学でした。

それは「赤字」とう仮想敵と戦う勇者の叫びでした。
それに胸を打たれた経営者たちは、
真剣に自社の未来と向き合い、自分の甘さに気づきます。
これを熱い使命感を持ったインストラクターたちと共有し、
具体的な方策に落とし込んでいくのです。

この合宿セミナーは約30年も続いており、
寝ずに自らの計画を立案する経営者たちのために、
同じ合宿に参加した先輩から差し入れが届きます。
合宿所に顔を出し、応援してくれるOBたちも大勢います。

こうして、4泊5日の合宿を通して
所長、インストラクター、先輩経営者たちが
HEROチームになって、「赤字経営70%」という
この国の現実を仮想敵として戦っているのです。
その姿は、難敵・北の湖挑んだ貴ノ花たちにダブります。

強敵がいる。挑んでも挑んでも跳ね返される。
だからこそ、勇者が育ちます。
大横綱・北の湖は、憎たらしほど強くあり続けることで
そのことの素晴らしさを教えてくれました。
感謝の気持ちとともに、心よりご冥福をお祈りします。

 

V字研メルマガ vol.117 「落合の『4番バッターはつくるな』理論と侍ジャパン」

2015年11月21日 / 10時46分

侍ジャパン、惜しかったですね。
世界の頂点まであと一歩で、準決勝敗退となりました。

ただ、負けるまでの6連勝は圧巻でした。
特に、投手では大谷投手、マエケン、
打者では筒香選手、中田選手らの活躍は見事でした。

彼らは自チームに帰れば4番バッターです。
が、侍ジャパンでは決してホームランを狙わず、
5番・6番打者としてとにかく次打者に繋ぐ
チームバッティングに徹していました。

4番だらけなのに、4番がいないチーム。
エースだらけなのに、エースがいないチーム。
今の侍ジャパンは、そんなHERO不在のチームだから、
強かったのだと思います。

なぜHERO不在だと強いのか?
そこで今回は、元ドラゴンズの落合監督が語っていた
強いチームづくりのコツを2つご紹介したいと思います。

第1は「4番バッターはつくるな」です。
意外に思われるかもしれませんが、
「4番バッターは内部から育てるものではなく、
トレードで獲ってくるもの」だといいます。

4番バッターはスター選手です。
スターはいるだけで相手に威圧を与え、怖がられる存在です。
ですからチームのメンバーからも特別視されます。

本人もスターであることを意識していますから、
スター然として振る舞います。
派手なことを好み、地味な裏方的なことをしようとはしません。

さらに、取り巻きを連れて歩くようになります。
取り巻きはスターの顔色を観て動くようになります。

2000年前半の頃のジャイアンツは、
スター選手ばかりを揃えたチームでした。
が、なかなか勝てないチームでした。
スター選手毎の派閥ができて、まとまりに欠いていたのです。

スターを育てると、チームがバラバラになる種を撒いてしまう。
落合監督は4番にはウッズやブランコ、和田など
「トレードで獲ってきた選手」を起用しました。
立浪や森野、福留などの生え抜きを使おうとはしませんでした。

選手時代の落合監督自身が派閥を作ったという話は
聞いたことがありません。
特別な4番は飽くまで孤高の存在にしておく。
それがGMになった今も続く落合監督の方針のようです。

第2は「エースは自前で育てよ」です。
エースはどんな剛腕投手でも、良いときばかりではありません。
4番バッターと違い、周囲のバックアップがあって
初めて良い結果が出せます。

そのため、皆から信頼され、支えられることが条件です。
しかし、スター扱いされるのも投手の宿命です。
スターらしくしようと取り巻きを連れて歩くと、
他の選手は距離を感じるようになります。

こうなると、良いチームワークは築けません。
そのためでしょうか、落合監督はエースを
他チームからトレードで獲ることはしませんでした。

川上、中田、朝倉、山本昌、浅尾…
起用した選手は皆、ドラフト指名で育てた人たちです。

このことを企業経営にあてはめてみましょう。
できる営業マン、できる技術者…
どの企業もヘッドハンティングしてでも
欲しいと思っているでしょう。

しかし、中小企業にとって大事なのは、
皆の力を一点に集中し、
その魅力で大企業に勝る社内の一体感です。
何よりも理念に共感し、会社と社長が好きという
愛社精神の持ち主でなければ務まりません。

そのため、内部でじっくり育て
役員へ昇進させていくのが一番です。

取引先からの出向者はそれだけでスター性を持っています。
仮に取引先から役員クラスの出向・転籍を受け入れるなら、
その人が経歴も実績も二の次にして、
身も心も出向先の人間となるよう求めてください。

今回の侍ジャパンのメンバーの素晴らしかった点は、
スター性がありながら、チームの一員意識が強かったことです。
それは彼らが皆若く、トレードを経験していない
生え抜きばかりだからかもしれません。

小久保監督はまだまだ頑張ってほしいのですが、
強いチーム作りの条件として、
今後もトレード未経験者を起用してほしいと思います。

 

V字研メルマガ vol.116 「相次ぐテロ事件と企業の『縁切り』戦略」

2015年11月18日 / 10時58分

パリで凄惨なテロ事件が起きてしまいましたね。

「武力でやられたら、武力でやり返す」。
この思想が、終わりのない戦争を生んでいます。

ただしビジネスでは、
「やられたらやり返す」だけが生きる道ではありません。
やられたら縁を切る『縁切り戦略』も立派な戦略です。

長年コンサルタントをしていますと、
クライアントの決断に
「え!取引やめちゃうの!?」と驚いたことは
一度や二度ではありません。

特に食品問屋さんが取引量第2位のお客であるA社との
取引を止めたときは驚きました。

A社とは長年の付き合いで、商い量も増えていました。
しかし、A社はとてもわがままでした。
まず、値引き要請がきつい。次に、多頻度配送を要求する。
さらに、販売の店頭支援を要求する。

いくら売っても、粗利が増えない。
それどころか、物流コストや社員の残業・休出のコストで
稼いだ金が加速度的に消えていきました。

さらに手形のサイトは長く、割引コストがかかる。
結局経費増のリスク増で、締めてみたら利益は減る一方。
取引するメリットはほぼなかったのです。

売上2位の顧客を捨てるのは、生半可な決意ではできません。
が、この経営者の英断を聞いた時、
私は財務に関するいろんな「掟」を知りました。

例えば、企業のコストを賄うのは粗利です。
粗利さえ大きければ、経費を支払っても利益が残ります。
ということは、粗利が大きければ、売上げは小さい方がいいのです。

高付加価値の商品を、その良さを分かってくれる
お客様のみに届け、末永くお付き合いをする。
右肩下がりの時代は、こんな特定市場でシェアNo.1企業の方が、
長期安定的に成長していけるでしょう。

また、人や設備に投資するならば、
単位当たり粗利が下がらないようにしないと
意味がないという「掟」も学びました。

社員5人で1億円の粗利を稼いでいるチームがあるとします。
一人あたりは2,000万円です。
ただしこの5人はとても忙しい状態です。

そこでこの5人を援ける内勤社員を1人採用しました。
この採用によって、5人は楽になります。
が、もし5人が稼ぐ粗利が1億円のままで終わったのなら、
一人当たりの粗利は1,667万円に下がってしまいます。

これでは1人を採用した意味がありません。
社員に楽をさせただけです。
そうではなく、1人入ったのだから、
その分、5人は稼ぐための外向けの活動を増やす。

その結果として、1億2千万超の粗利を稼いだら…
一人当たりの粗利は2,000万円超になります。
経営者の立場からすれば、そういう投資がしたいのです。
そうすれば、次も同様の投資ができるからです。

こうした「掟」に則った『縁切り戦略』では、
宅急便の生みの親である故・小倉昌夫会長の
「なぜだ!」で有名な岡田社長時代の三越切りが有名ですね。

当時、大和運輸は三越のお中元・お歳暮の配送を
請け負っていました。
売上げに占めるウエイトはとても大きかったといいます。
それでも大和運輸から縁切りを申し出たのは、
繁閑の差が激しく、儲けが出ない上に、
発注者の優先的地位の濫用に、我慢できなくなったのです。

縁切り戦略を決断したのは、折しも小倉会長の中で、
新規ビジネスとして宅急便への想いが芽生え始めた頃です。
三越との取引停止で浮いた人員は、宅急便に回す。
そうすることで、一人当粗利は確保できると信じたのでしょう。

この縁切りの決断を社員に伝えたとき、
社員は反対するどころか大喜びしたと言います。

今日、私たちが気軽に宅急便を利用できるのは
故・小倉会長のこの三越に対する『怒り』と、決断のお蔭です。
理不尽な支配者に隷属するより、その支配から独立し、
自分を活かす道を探してくれたからこそ、今の宅急便があるのです。

上記の食品問屋もA社と縁切りの後、最高益を出しました。
袂を分かつことで、憎んでいたはずの感情を
美しい社会的な価値へと変えられる。
これがビジネスのチカラだと思います。

テロ事件の悲惨な映像を観ながら、平和な世界で
ビジネスに携わることができる喜びをかみしめました。

 

V字研メルマガ vol.115 「MRJの試験飛行成功とものづくりの醍醐味」

2015年11月15日 / 10時08分

MRJが空を飛びましたね。
思わず、ガッツポーズしてしまいました。

当日の報道をTVで観ながら、
私がとても感動したシーンがありました。
それは、約15人の飛行前の整備工たちです。
彼らは輪になって肩を組んでいました。

そして、顔を上げたと思ったら大きな声を張り上げました。
そんな彼らを見ていて、彼らこそがHEROなのだと思いました。

というのも2008年に同社を訪問したときに、
「三菱重工のHEROとはどんな人ですか?」と尋ねたら
先方の担当者からこんな答えが返ってきたらです。

「わが社には『ロケットを飛ばしたのは俺だ』と語る
社員が何百人もいます」
「航空機に巨額を投資するよりも
利回りの良いビジネスはあるかもしれないが、
『俺達しかいない』という意識があります」

ツナギ姿で最適な環境を生み出す彼らは、
「俺たちしかいない」意識をもったHEROたちなのです。

そんなHEROたちの円陣を観ながら、私の中である記憶が蘇りました。
それは、私がブラザー工業に入って2年目の冬。
後に全米シェア70%に達する大ヒット商品『P-touch』
(日本国内ではキングジムさんにOEM供給した『TEPRA』)
の商品企画を担当していた時のことです。

やっとの思いで試作機と試作テープが出来上がり、
いよいよ最初のテスト印字を行うという時でした。
設計者数人と、企画担当者3人とデザイナーが
頭を突き合わすようにして、机の上の試作機を見ています。
期待通りにちゃんと動いてくれるかどうか、皆ドキドキです。

このとき私は、販売の企画担当としてこの場に参加していました。
つまり、買い手としてテストを評価する立場です。
もし、思うように動かなれければ
「やり直してください」と言う役目でした。

こんな小さな機械でも、
試運転は飛行機の試験飛行と同じ緊張感が走ります。
記念すべき最初の印字です。
私は、初めてわが国でTV放送された時に放映された映像が
「イロハの『イ』の字だった」ことを思い出していました。

そして「今日の最初の印字が後々も語り継がれるかも!」
と本気で考えていました。
では、何と入力するべきか?
決めるのは私の仕事でした。
評価者が言った言葉が打ててこそ、合格だからです。

そこで私は、瞬時にいろいろ思案したのですが…
そのとき口をついて出たのは、
その時流行っていた映画のタイトルでした。

「では『私をスキーに連れてって!!』って、打ってみようよ」
この提案に皆が合意しました。

果たして、白地のテープに黒インクで
キレイに印字されて出てきました。
この瞬間、「おおっ!やった!」とどよめきが起きました。

次に別の色のカートリッジを交換してテストしました。
青テープに黒インク、赤テープに黒インク、
黄テープに黒インク、緑テープに黒インクと
無事印字が終わりました。皆、問題なしでした。

そして、最後の6種類目。
「こんなの売れるんかいな?」といいながら、
化学チームが遊び感覚で創ったカートリッジがありました。
黒テープに金のインクのカートリッジです。
僕らはそれをコードネームで「位牌」と呼んでいました。

「位牌も完璧だ!」と誰かが言って、
6本の「私をスキーに連れてって!!」と書かれた
6色のテープが出来上がりました。

それを黒い台紙にきれいに並べて貼ってみました。
すると、めちゃくちゃ色鮮やかでした!
テープの赤と青は当初から黒文字が目立つよう
少しくすんだ色を選んでいましたが、それが幸いしました。

台紙に貼られた6色のテープを見て、
当初のドキドキはワクワクに変わりました。
そして、皆で思いっきり拍手しました。

不可能と思っていたことが現実になる。
ここを境に、一気に世の中が変わっていく予感がする。
多くの人が喜ぶ顔が次々と脳裏に浮かぶ。
この手応えこそ、ものづくりの醍醐味です。

MRJの飛行成功とそこに関わった人々の笑顔を見て、
ものづくりの醍醐味を感じた若者もいたと思います。
私もイノベーションを生み出した経験のある
数少ないコンサルタントとして、
そんな若者を育てることへの想いを一層強くしました。

 

V字研メルマガ vol.114 「長野・中央タクシーに学ぶ『現場力』を高める方法」

2015年11月13日 / 17時08分

前回号では、旭化成建材の手抜き工事の事件を題材に
同じ職場の人がネガティブな発言をしたとき、
それをかき消すポジティブ発言できる人がいれば
それこそが良いチームだとお伝えしました。

言葉を変えれば、規律がしっかり行き届き、
何が正しくて何が間違いなのかを
自分たちで判断し、行動に移せる組織です。

現場で起きたネガティブなことをポジティブに変える。
そのチカラを私は「現場力」と呼んでいますが、
では、どうしたら現場力を高めていけるのでしょうか?

その方法のひとつが、組織の規律を生み出す元となった
昔の事件を「組織の記憶」として伝承していくことです。

今の従業員が、規律が生まれた原因を認識するからこそ、
同じような局面で、正しい判断ができる人財となるのです。

先日、「奇跡のタクシー」として有名な
長野県の中央タクシーさんに朝礼見学に行ってきました。
当社が奇跡と呼ばれるのは、
第一は一台当たりの売上高が業界平均の3倍以上、
第二は年間のお客様からのお礼状が500通、
第三はこの業界で退職者が過去10年間ゼロだからです。

同社の人気は、ホスピタリティのレベルの高さにあります。
この高さは訓練によって得たものではなく、
ある事件への反省、反動から生まれたものです。

同社は現在の宇都宮司社長のお父さんである恒久会長が
創業した会社ですが、会長は中央タクシーを興すとき
お父さん(現社長のおじいさん)さんから、
「理想のタクシー会社を作れ」と言われています。

なぜ、そのように言われたのか。
それは会長のお父さんが、業績の悪いタクシー会社を引き取って
その立て直しに大変苦労された経験があるからです。

昔のタクシー運転手は荒くれモノばかり。
ランニングシャツに雪駄でそのまま仕事に出ようとします。
会長のお父さんは、その恰好では行かせない!と必死でとめます。
にらみ合いの末に、次から次へと人が辞めていきました。

また、「手持ちのお金がないのだが、家に帰ればある。
そこで払うから」と言ったお客様がいました。
これを聞いた運転手は、あろうことかそのお客さまを
家に連れて行かずに、会社の本部に連れてきました。

そして「こいつは無賃乗車だ!」だと言って、
他の運転手と一緒になって車洗浄用の高圧ホースで水をかけました。
この仕打ちに驚いた会長のお父さんは、社員にそれを止めさせ、
お客様に一生懸命謝罪しました。

が、そのお客様は、「一刻も早くここから返してくれ」
「なんでこんな目に合わないといけないのか」といい、
ワンワン泣かれたそうです。

そうした悲劇の多くは、「タクシー運転手はこんなもの」という
運転手自身の「既成概念」から生まれたものでした。
他社で素行の悪い先輩を見て、それをお手本としてしまった
運転手たちの考え方を変えることはとても難しいことだったのです。

そこで会長のお父さんは、恒久さんに
「お前は理想のタクシー会社を作れ」と指示したのです。
それは、お客様をお客様と呼び、ドア開けサービスをし、挨拶をする、
サービス業として当たり前のことを当たり前に行う
『サービスが先、利益が後』を貫くタクシー会社でした。
そして、未経験者のみを採用し教育を重ねてきました。

同社の朝礼は、それを反復練習する教育の場でした。
私が見た朝礼では、運転手が盲人のお客様を迎えに行き、
病院お連れするロープレをやっていました。
ドアを開けてから杖を預かること、
お客様の手をシートに触れさせてから座らせること…等、
お客様を安心させる細かい作法があります。

病院に着いたらお客様の手を引いて車から下し、
病院の係の人のところまで案内します。
このとき「私にお手伝いできることは他にございませんか?」
と尋ねる気の配り方には驚きました。

こうした所作が自然にできるのは、上記のような
「組織の記憶」を現在の社長が語り継いでいるからでしょう。
それが今の同社の「行動基準」になっているのだと思います。

同社の壁には会長のお父さんの遺影が掲げられていますが
その下には「ハートフルカード」が多数張り出されています。
「ハートフルカード」は社員が書くカードです。
そこには「ほんの小さな出来事でも、あなたの心を
あたたかくしてくれたことを記載してください」とあります。
その一枚を紹介します。

「27年8月5日 本日は山梨県河口湖に来ています。
晴天に恵まれとても美しい富士山が、目の前におられます。
すごく感動し、そしてなぜか心が浄化している感じがします。
富士山様ありがとうございます」

歴史に学び、日々小さな気づきを書いて仲間とシェアしている会社。
ネガをポジに変える現場力が強いのは、当然かもしれません。

 

V字研メルマガ vol.113 「横浜のマンション傾き事件はなぜ起きたのか?」

2015年11月9日 / 18時14分

「横浜のマンション傾き事件はなぜ起きたのか?」

旭化成建材の杭打ち事件が、連日報道されていますね。
建物が傾いてしまう恐ろしい事件ですが、
ブランド力のある会社で手抜きが常態化していたのは残念ですね。

おそらく同社の現場担当の誰かが
「あ~、あの杭のデータね。
プリンタの紙がなかったから記録取れなくてさ…」
「じゃ、また取るのも面倒だし、他のデータ、
適当にコピペしておけばいいんじゃない?」
なんて言っていたのでしょう。

このとき、オフィス内の誰か一人でも
「いくらなんでもそれは拙いからさ、もう一回、ちゃんと測ろうよ」
という人がいれば、こんな事態にはならなかったでしょう。

というのも、私のあるクライアントで、
好成績を連発している営業店があるからです。
この営業店、人数は男女合わせて6人ですが、
この6人のチームワークがすごく良いのです。

成果が出ているのは、チームワークの賜物です。
そこでその営業店を率いているマネージャに
「なんでそんなにチームワークがいいのですか?」
と聞いてみました。
すると、次のような答えが返ってきました。

「うちの営業店では、誰かがネガティブな発言をすると、
それをすぐさま隣の人が消すのです。これが自然とできています。

例えば誰かが『もう嫌だ~こんなことやっていられないよ』と
ネガティブ発言をしたとします。それを聞いた隣の人が
『そんなことないよ。もう少しだから頑張ろうよ。
私も手伝うからさ」と、そのネガティブを打ち消す発言をする。

すると『はいはい、わかりましたよ。やりますよ』と
ネガティブだった人がポジティブに変わる。
そしてやり切ったときは『やって良かったね!』と称え合う。
こんな関係が築けているのです」。

この話を聞いて、私はこれは凄い関係だな…と思いました。
そこで「なんで皆さんこんなポジティブになれるのですか?」と
突っ込んで質問してみました。すると当のマネージャは
「自分が信頼して任せているからかな」と言いました。

「部下は上司が思う以上に『自分でやりたい』
『やる以上はしっかりやりたい』
『しっかりやってお客様から認められたい』
気持ちが強いはずだと思っています。

だから、その気持ちに応えるように、
『じゃ、この仕事をやってみて』と仕事を任せます。
そしてそれができたら、
『やったね!できたね!凄いね!』と一緒に喜ぶのです」。

そう語るマネージャを見ながら、私は誰もが、
彼の下ならいきいきと働けるのではないかと思いました。
そして、彼のチームのチームワークが図抜けている原因は
何より彼のリーダーとしての姿勢にあるのだと思いました。

リーダーがどんな局面でも愚痴も不満も言わず、
部下がネガティブなことを言っても、
ポジティブな発言を繰り返し、決してあきらめずに
部下の力を信じて任せる。

そんなマネジメントをすれば、
必ず明るいポジティブなチームができるでしょう。

最近、東芝日常劇場で『下町ロケット』が放映されていますが、
このドラマの主人公である佃社長は、
部下の前では決して弱音を吐きません。
絶望的な状況の中でも、部下の力を信じ
「きっとできる」「必ずできる」と希望を持ち続けます。

小説ですから、「そんな人いないよ」と言われるかもしれません。
が、あのドラマに登場する佃社長に多くの視聴者が惹かれるのは、
夢の実現を信じて部下に仕事を任せてくれる上司こそ、
今日的に求められている理想のリーダー像そのものだからでしょう。

もし、そんなリーダーが旭化成建材にいたら、
現場の社員もネガティブな発言をしても、
きっと隣の誰かが「それやばいよ。コピペなんてやめとけよ。
面倒だけどちゃんと測り直そうよ」と言ったのではないかと思います。

今回の事件は、元請けのチェック体制の甘さが指摘がなされています。
確かにそれは再発防止には効果的な方法でしょうが、
本当の原因は「ネガティブを平気で許す社風」に
あったのではないかと思います。

そして、何年かかってもいいので、
この事件を機に、仲間のネガティブ発言を自主的に打ち消すほどの
ポジティブな会社へと変貌していただきたいと思います。

 
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株式会社 V字経営研究所

株式会社V字経営研究所は、2014年4月に起業した、次世代経営チームの育成を支援するコンサルティング会社です。 「 事業と人財のV字回復するプログラム、あります 」 をスローガンに、企業の最重要課題である増収増益の実現と人財が育つ仕組みづくりを支援します。また、その実践を通じて社長が右腕と頼む次世代経営チームを育てます。次世代経営チームが強くなれば、今日出会ったお客様と、100年後も付き合い続けることができるでしょう。
企業がそのような100年ブランドへと成長することが当社の理想です。

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